第1545回 ゾルゲ諜報団とアラン・スミシー
麦酒飲む時間気にせず日曜日。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからずとなり」と言えば、世阿弥『風姿花伝』ですが、これは、「物事は隠すべきである」という意味なのでしょうか? いや、そんな単純なことではないでしょう。
風姿花伝を読んでみると、「秘事といふことをあらはせば、させる事にてもなきものなり」とあります。秘事を明かしてみればたいしたことではないものだ、というのです。
また、「これは花ぞとも知らぬが、為手の花なり」ともあります。能の観客にとって、それが花なのだとも知らないのが役者にとっての芸の花であるというのです。
さらには、「かかる秘事を知れる人よとも、人には知られまじきなり」とありますから、つまりは「そういう秘密を知っている人間であることも、他人に知られてはならない」ということです。
「私は秘密を知っているぞ」と喧伝した上で隠すのでもなく、「メイキング」と銘打って舞台裏を明かすのでもなく、むしろ自分は常に自然体であるべきだと教えているような気がします。そうすることが結果的にすべてをさらけ出すことにつながるのかもしれません。
そういえば漫画『パーマン』で主人公須和ミツ夫は最後まで自分がパーマンであることを明かしませんでした。読者はその秘密を最初から知っていながら、秘密が秘密だとされていない世界を堪能するのです。
<今日の一唱>
藤子・F・不二雄『パーマン』