第1523回 ノエシスとL錐体

街宣の声で目覚める猫とわれ。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

自分が見ている物の色を他人も同じように見ているかどうかを知る術はない、というようなことを何かの本で読んだことがあります。確かに色とは、対象物に当たった光が反射して観察者に受け取られ、その脳内で再生されるものなのであって、根本的にその人の完全プライベートなローカルなもので、そもそも他者と共有したり交換したりできるものではないのかもしれませんが、そんなことを言っていたら誰も信号を守れないし郵便ポストを見つけられないし紅白歌合戦を応援できないし馬とシマウマを見わけられないじゃないかという話になってしまいます。

人は他人と同じ現象を直接体験することで、相互主観性によって理解を共有することができる、ということもあるし、なんなら#ff1234などとカラーコードを指定することでほぼ同じ感覚を交換することはできそうです。本当に難しいのはその色に対して湧き起る感情とか想い出とか連想とか感動といったものなのでしょう。

そういえばいしいひさいち氏の四コマに「人はぼくの眠りを眠れない」とありました。人の経験を追体験するにはその脳内で起きた流れを自分の脳内で展開するしかないのでしょうか。読書をしたり映画を見たり音楽を聴くのはその一環なのかもしれません。

(A面へ)

<今日の一唱>
いしいひさいち『ののちゃん』

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