第1470回 クロス・アディクションと茶湯座敷
五十パー超えの湿度が春を呼ぶ。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
「好く」という言葉の語源はよくわからないのですが、古語辞典などを見ると何かに魅力を感じたり関心を惹かれたり心を寄せたりすることを「スク」と言ったのだと考えられます。「好き者」というと色好みの意味を連想しがちですが、もとは風流を好む人、芸道に打ちこんでいる人のことで、さらにそこから「数奇」に繋がり、数寄屋造や数寄屋頭などにも発展していますね。
人にはいろいろな数奇があるはずで、「とことん追究してよりレベルの高いものを追い求める」こともあれば、「とにかく一つでも多くふれあいたい」ケースもあるでしょう。音楽が好きな人でも、「この音楽家のこの演奏でなければならない」という人と、「誰のどんな音楽でも一様に好む」という人ではスタンスが全く違います。どちらが本当の数奇なのかはともかく、人には人の数奇があり自分の数奇を誇ること、他人の数奇を尊重することが重要なのでしょう。
そういえば山下和美先生の実録漫画『数奇です!』で、「和風ではなく『和』が好き」とありました。この差は歴然としていますね。ちなみに「数奇者」は「すきしゃ」と読む方がよさそうです。
<今日の一唱>
山下和美『数奇です!』