第1452回 煮売屋とモーダスポネンス

春惜しむ暇もないまま過ぐ渡世。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。

今日の晩飯には何を食べようか、明日の朝の食事はどうしようか、と考える時、だいたい2種類の思考パターンがあります。

ひとつは、「キャベツと白菜があるからそれで味噌汁にして、冷凍の鶏肉を使ってメインにしよう」というように、手元にある食材を前提に、そこから調理できるものを考えるというもの。

もうひとつは、「魚でも食べたいけど、家にはストックがないのであの居酒屋に行くか、それともスーパーで買ってきて調理するか」と、食べたいものを思い描き、それに必要な手段方法を検討するパターンです。

前者は現状を踏まえた上でそこから繋がる道筋を辿るもので、後者はゴールを設定した上でそれを実現するための方法に落していくわけです。両者は思考の流れが全く異なっており、それは演繹と帰納であり、順列組合せと場面展開であり、ボトムアップとトップダウンであります。

たかがメシを食うだけのことに大げさな話だと言うなかれ。食事も家事も事務も仕事も遊びも会話も休息も、すべては発想と決断によって次に向かいます。どんな時にどんな発想ができてどう決断するのか、人生はその連鎖によります。

そういえば、いしいひさいし氏の傑作フレーズに「どこで食べるかは決めていないが、何を食べるかは決めている。私の場合、カレーかまぼこどんぶり」というのがありました。旨そうなのかどうかも気になるところですが、みごとに徹底された決意です。

(A面へ)

<今日の一唱>
いしいひさいち『DOUGHNUTS BOOKS』

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