第1311回 二コラ・ブルバキと充足理由律
消えるんだよ。なにもかもきれいさっぱりなくなるんだよ(藤子・F・不二雄『21エモン』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
中学か高校の数学で空集合というものを習いました。中身が何もない集合です。中身がないのなら集合でもないだろうと思ったものですが、今なら、これがきわめて重要な考え方だと実感できます。
「何もないことが一つの存在である」という概念はいたるところで機能しています。そもそも数字のゼロだって無であり空に等しいわけですが、ゼロがたくさんあればあるほど数は増えていくのですから、その存在価値は恐るべきものがあります。
容れ物の中に何か一つでもモノが入っていればその構造体には意味が生じ、何らかの属性を持つことになりますが、もし何も入っていなければその容れ物は次の段階で何にでも化ける可能性を持った無限の存在と言えます。「何でもある、は、何にもない」と言いますが、逆に「何にもない、は、何でもある」ということです。
<今日の一唱>
藤子・F・不二雄『21エモン』