第1090回 アルファ・ベータ法と明清楽
「先を見つめて」「先を見つめろよこの野郎」(松本人志『ゲッタマン』)。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
楽譜を見ながらピアノを弾く時、当然のことながら、曲の中の、いま差し掛かっている箇所の譜面を読まなければ弾けないわけですが、そこだけを見ていても曲として表現することはできません。それはただ単にその瞬間に弾くべき音だけを出しているに過ぎず、次の瞬間には演奏が止まってしまいます。
演奏を止めないためには、改めて次の瞬間に相当する譜面を読んでそこに書かれている音を弾くことになりますが、いちいち譜面を確認しては音を探して指で打つという動作を繰り返しているようでは、とても演奏とは言えません。
つまり音楽を曲として演奏している時、決して今だけを見ているわけではなく、今を見ながらも常に1小節先を読み、2小節先を思い、1ページ先を待ち構え、2ページ先を想定し、エンディングまでもイメージしているのです。その時その時の瞬間を見ながらも、未来を見つめ、全体を眺めているわけです。
といっても、演奏家はすごいことをしている、と驚くことはないでしょう。誰もが日常生活の中で普通にしているはずのことです。
<今日の一唱>
松本人志『ゲッタマン』