第986回 ヌーメノンと通謀虚偽表示
福の禍と為り、禍の福と為るは、システムべからず、深測るべからざるなり。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅己です。
どんなことでも良いか悪いか厳密に決めることはできない。法律やルールに従へばそれなりの判断は下せさうに思へるが、絶対的なものではないし、法律やルールだつて解釈に幅がある。発生した事象をどの法で裁くのかも機械的には決まらない。そもそも起きた現象自体を客観的に観察評価することからしてほぼ不可能に近い。人間の目で見る以上は主観が入るからだ。
だから何かについて良いとか悪いの評価は人によつて当然異なる。誰かが良いと言つたものが自分にとつても良いとは限らない。たとへそれがどんなに論理的な根拠を持つてゐやうが、どんなに多くの賛同者がゐやうともだ。だから自分の意見といふのは自分にしか持ち得ない重要なものであり、同時に他人の意見もその人にしか持てない貴重なものであるはずだ。至極当たり前のことを書いたのはこのことを明確に意識するため。
IT現場でも自分の意志や意見を大事にするべきであり、かつ、他人の意見も同様に重視するべきであるが、どうもさうできない人が多いやうに思へて仕方がない。
<今日の本歌>
劉安編『淮南子』人閒訓篇