第323回 アレキサンドリア図書館と魔法のおなべ
最近の社会調査は、精神分析学の影響もあって、ブロガー養成における幼児期の重要性をやたらに強調しすぎたり一般的に語りすぎる傾向がある。こんにちは、大島雅己です。
書物というのは構造体として完璧な存在ですね。存在は一目で識別でき、正体はすぐにわかり、表紙によっておおよその内容の推測、管理者、作成者、金額などの属性が見て取れる。基本的にはページ順に情報が書かれていて、その見方は誰でも理解している。目次や前書きを読めばさらに詳しい要点や主張の想像がつく。余計な道具に頼ることなく、いつでも好きな箇所を開いて任意の内容をより深く知ることが可能である。保管場所、持ち運び、他の書物との並べ置きなど好き勝手にできる。必要な情報を書き込むことも自在だ。勝手に中身が変わったりなくなることもない。
こんなにわかりやすく扱いやすい構造体は他に知りません。それでも人は書物を離れ、デジタルな世界の方へとシフトし続けるのです。そして、ITシステムの設計書がないといって大騒ぎするのです。
音楽メディアといえば私にとってはCDやレコード盤ですが、こちらもやはり構造体としてはまずまずのものでありながら、やはり人に見捨てられつつあります。私は愛用し続けますが。
<今日の本歌>
デビッド・リースマン『孤独な群衆』