第12回 クジラと赤プリ
最初から飛ばしてちゃ長くは持たんので、チビチビ楽しんでいきます。こんにちは、大島雅己です。
筒井康隆氏の「横車の大八」という短編小説が大好きで、ここに出て来るエピソードをしょっちゅう思い出します。
昔、名のある大工が建てた日本家屋は、とても頑丈であると同時に、壊す時も簡単に壊せた、というのです。
つまり作る時から、壊す時のことまで考えて作っていたというわけです。家の中のどこか一か所に、ヘソと呼ばれるポイントを仕込んで置き、ここを押せば家全体がきれいに解体されて、部品は傷つかずに全て再利用できる。
この考え方のすばらしいのは、「ムダを出さない」ということと、「いらなくなった時のことも想定してものを作る」という精神。
環境問題、食糧問題などの観点でも、この考え方を大事にしたいものです。
そして、ITの分野でも全く同様で、私はこの問題にほとほと頭を痛めてきました。
ほとんどのシステムは、「いらなくなった時のこと」を考えずに作ってしまうのです。なかなか、新しいものを作ろうという時に、いらなくなった時のことを考えられる人はいないのかもしれません。
しかし、作ることがゴールなのではなく、作った時からライフサイクルが始まるわけなので、そのあとどうなっていくのか、ということまで考えなければならない。そのシステムは何年ぐらい使い続けるのか。使い終わったらどうなるのか。作り直してグレードアップするなら、その設計をいつから考えるのか。終了するなら、止め方まで考えられているか。決まっていないのなら、いつ決めるのか。などなど。
作っているうちに、そのシステムの終わり方まで見越して設計し、「ヘソ」を押せば全てきれいに片がつくようなシステムを作れる人は理想のシステム屋さんです。