第1583回 八綱弁証とビアライヒェン
こんこんとゆつくり麦酒飲む老父。こんにちは、スパイラル研究所の大島雅生です。
酒を飲んでいる時の感覚というのはどうにも説明が難しい。酩酊していて頭が働かなかったり体の動きが鈍っていると「ああ酔っているのだな」と感じるが、それを意識できるのだから酔っていないとも言える。
逆に本当に酔っている場合、自分では酔っているとは意識しておらず、つまり酔ってなどいないつもりでいて、後で素面になってから「あの時は酔っていたな」と振り返るしかない。実際にその時の記憶はないことが多い。
酔っていると思い込んでいる時は酔っておらず、酔っていないつもりの時は酔っている、ということなのであろうか。
もしかしたら酒に限らず。Aであるつもりの時は非Aであり、Aでないつもりの時こそがAである、そういう事象はどこにでもあることなのかもしれない。
そういえば『ドラえもん』に、世にも珍しい50円玉が出てきます。ジャイアン曰く、「おもてのもようがうらに、うらのがおもてについてる」のです。つまり表と裏が入れ替わっていれば元の通りであるのだから、「酔っているのに酔っていないつもり」と「酔っていないのに酔っているつもり」は同じだということか。
<今日の一唱>
藤子・F・不二雄『ドラえもん』