第373回 百万塔陀羅尼とエビングハウス

魂の本性的な動きのいっさいは、物質的な重力の法則に類する法則に支配されており、恩寵のみが例外をなす。こんにちは、大島雅己です。

記憶力が日に日に衰えているのを感じて悲観に暮れています。たった三文字の固有名詞が覚えられなくてガクゼンとすることもしょっちゅうです。もしかしたらITへの依存度と記憶力の低下が比例しているのかもしれません。いつでも手元でものを調べられるという状況が脳に甘えを与えているのでしょう。

忘れるのを防ぐには、記録を取るしかありません。だからメモとか書類とか議事録とか設計書は重要なのです。自分で書いたプログラムだって1年もすればどこがどうなっていたか完全に忘れています。アタマの中身で勝負できる人なぞごく一部でしょう。人の記憶がいかに当てにならないかは国会中継などを見ていても明らかです。とにかく記録を取るべし。

ただしもう一つ大事なことは、書いたものの管理ですね。必要な時に取り出し、再生ができる状態にしておくこと。内容が変化するものは常に更新し続けること。不要になったら廃棄すること。そうしないと書いたものが使われないまま溜まっていきます。

音楽の世界でいえば譜面だし、囲碁将棋なら記譜だし、芝居なら台本が大事ですね。落語家は大量の古典落語をほぼ口伝で教わるといいますが、本当に記録を使わずに耳だけで覚えているとしたらものすごいことだと思います。

<今日の本歌>
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』冨原眞弓訳

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