第14回 フリマとRFI
どこまでもだらだらといい加減な傾斜で続いているらせん階段を登り続けます。こんにちは、大島雅己です。
立川志の輔師匠の創作落語「みどりの窓口」が大好きで、何度も聴いてほとんど暗記してしまいました。
みどりの窓口にやってくる様々なお客のけったいな注文に駅員が困り果てる話で、そのやりとりだけでも充分面白いのですが、最後のサゲがまた秀逸で、見事としか言いようのない落語だと思っています。
ここに出てくるやり取りの中で、常に私の脳内に居ついているシーンがあります。
客は威勢がよく気性の荒そうな男性で、どこそこまで一番早く行ける切符を1枚くれ、という。かなり急いでいる。
駅員はコンピュータでいろいろ探しますが、なかなか客の要求にぴたり合致する切符がありません。
いろいろとやり取りするのですが結局いい切符は空いていませんでした。
ここで客の言うセリフ「いまお前が持ってる切符を全部並べてみせろ、そうしたら俺がほしいものを選ぶからよ」。
つまり、客の要望を聞いてから、それに合う切符を売る、というやり方が気に入らないわけです。順番が逆だろう、と。
売る側が「こんな商品がありますがいかがですか」と聞いてから、買う側が欲しいものを選ぶべきだろう、と。
駅員は、切符が物理的に存在しているのではなくコンピュータで制御しているのだと説明しますが、このお客はそんなことは理解できません。
箱の中に最初から切符が準備されていると思い込んでいるので、箱を開けさせようとし、ここにはありませんと答えると隣の窓口に並ぼうとします。
落語としては傑作なやり取りですが、考えさせられるのがこの商売のありかたの話です。
サービスを提供する側が「こんなサービスありますよ」と言い、買う側が中身を吟味し、気に入れば購入するのが正しいのか。
あるいは、買う側が「こんなサービスがほしい」と言い、提供する側は要望を聞いてから、対応できる場合は売るのが正しいのか。
業態によってもいろいろなケースがあるでしょうし、どちらが正しいというのはないのかもしれませんが、例えばシステム開発の場合であれば、まずは「こういうシステムがほしい」という利用者の声があり、その要望に対して開発業者がモノを作っていくことになるので、みどりの窓口の駅員と同じパターンです。ただし、システム開発の場合は、注文を出す前に、開発業者がどんなサービスを提供できるのかを事前に客に提示させるケースがありますので、逆パターンもあると言えます。
ちなみに、お客さんの「こんなものがほしい」という要望と、提供者の「こんなことができます」というのを両方集めてマッチングさせるという手法が、リクルートなどがやっているビジネスモデルです。
<今日の本歌>
京極夏彦「姑獲鳥の夏」