第509回 ウソ手とホーカイ節
少年老い易く學成り難し/一寸の光陰輕んずべからず/未だ覺めず池塘春草の夢/階前の部録已に秋聲。こんにちは、大島雅己です。
映画『ブルース・ブラザーズ2000』の中で主人公が弁じる大好きなセリフがあります。彼はブルースという伝統音楽を誰も見向きしなくなることを恐れ、バンド仲間を焚きつけます。
「後に残るのはデジタルサンプルのテクノ音楽、上辺だけのシンセリズム、暴力的な偽物ギャング・ラップ、腐ったポップにサッカリン・ミュージック、魂のない抜け殻サウンドだ。今ここで逃げたら、過去の偉大な音楽たちとはお別れなんだ。ブルース、R&B、ソウル音楽の火は消える。つまり、世界から光がなくなるということだ。何十年も人類を感動させてきたすばらしい音楽が放棄されてしまうんだぞ」
どんな世界でも、利益が最優先されてしまうと労力と品質と時間は二の次に送られる。手間暇かけて本物を作らなくても、安価な代替品で間に合うのならその方がいい。一時的な売上につながる今だけ体裁よければOK。実力でなくても虎の威を借りる狐で行こう。こういう風潮が芸術にも食品にもビジネスにも政治にも、世界中で蔓延しているのを感じます。悲しいことです。
IT現場でもその考え方が持ち込まれるかもしれません。一時的な売上対策でほしくもないサイトを作る、注目を浴びたいだけのために最先端技術を取り入れる。早く作りたいので粗悪なソフトで間に合わせる。こういった対応は、あとを守る人達が不幸になります。
<今日の本歌>
朱子『偶成』