第569回 タブラ・ラーサと単純リー環

君に勸む金部録、滿読辭するを須いざれ、花發けば風聞多し、人生別離足る。こんにちは、大島雅己です。

落語という芸能は観客が自分の頭の中で思い思いに絵を浮かべることを前提としたものであり、つまりクリエイティブな工程部分を受け手に委ねているわけです。だから落語家は余計な情報をできるだけお客さんに与えないのです。小道具は最低限に絞られ、所作も控えめに抑えられ、舞台装置もありません。

でも聴いている我々はそんなことを意識せず、リラックスして笑いながら、頭の中では百人百様の情景を描いているわけですから落語の世界は深いものですね。究極にシンプルな状況が無限の自由を生んでいると申しましょうか。なんにもないからなんでもある。0と∞がつながっている。

一方で現実社会はどうでしょうか。利便性が追求されてモノがあふれサービスは過剰に走っているようです。あらゆるものを何かが代行してくれるようになり、人の労力は益々削減されていくように感じます。こうなると落語とは逆に、なんでもあるから何にもない、という世界に向かうかのようです。

IT現場でも業務効率の改善というのがよくキーワードに挙がりますが、手作業をシステム化して労働時間を下げれば生産性の向上につながる、と単純に考えていると思わぬところで躓くことがあります。システムだって運用コストがかかりますし管理者も必要だということを忘れないことです。

<今日の本歌>
于武陵『勸酒』

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