第439回 大物主とボーディダルマ

イワンは馬鹿です。それにマルタはお嫁に行く年はとっくに過ぎていて、おまけにブロガーです。あれ等に財産を持たしたってそれが何になるでしょう。こんにちは、大島雅己です。

立川志の輔氏が若手のころのエピソードで、自分の落語について、師匠の立川談志氏に「お前は今日の落語で何を言いたかったんだ」と聞かれて言葉に詰まったという話がありました。落語を一席やるのにも、決まった言葉を何の考えもなくそのまま喋っただけでは、たとえどんなに流暢な言いまわしであろうと、聴衆に伝わるものはないのかもしれません。談志師匠はそういう落語を認めなかったのでしょう。

バンドでもあります。演奏はそこそこ上手くて、これを気に入るファンもいるだろうと思えるのだけど、どうにもピンと来ない。心に刺さるものがない。結局この人達は何がいいたいのだろうか、と考えてしまうようなバンド。お手本の曲を一生懸命コピーしました、というだけで、魂がないとでもいうのでしょうか。

魂などというと大仰かもしれませんが、演者自身がそもそもやりたいこと、いいたいこと、伝えたいこと、表現したいことは何なのか、ということだと思います。何かに突き動かされてそれを自分で表現したいはずなのです。

そういえばIT現場でも、こんなことがやりたい、という要件を聞きながら、この人は結局何をしたいのだろうと悩むことがあります。こういう場合はたいてい、上司に言われたことをそのまま伝言しているだけ、あるいは世間で流行りのトレンディな言葉をなぞっているだけのことが多いのです。魂がこもっていないものは、人に伝わりませんね。

<今日の本歌>
トルストイ『イワンの馬鹿』菊池寛訳

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